<b>悪魔に仕える牧師</b>

悪魔に仕える牧師

悪魔に仕える牧師


利己的な遺伝子 isbn:4314005564』で有名なリチャード・ドーキンスのエッセイ集。これまで発表されてきたものを再編したものだそうだ。
ダーウィン主義に基づく難しい本かと思っていたら,科学とは何か,宗教と科学がどう付き合っていくか,教育はこうあるべきだといった,広範囲のテーマについてドーキンスらしい理路整然とした語り口で語られている。これまで科学は宗教と対峙することを拒んできたが,9.11のテロに至って黙っていることはできないというドーキンスのメッセージには説得力がある。不信心の典型のような私には想像つかないことだが,西欧社会における宗教の影響力は計り知れないものがあるのだろう。いまこそ個々人がそれぞれの価値観で声を上げよと力説する。
細胞レベルで伝達される物理的な遺伝情報に対して,宗教に代表されるような社会の中で伝達される遺伝情報を“ミーム”と呼ぶのだそうだ。遺伝学的なアプローチで社会構造を分析する人も増えてくるのかもしれない。それが自然淘汰なのかどうかは,私にはわからないけど。
この本の最後に自分の娘に対するメッセージが公開書簡という形で掲載されている。大事なのは「証拠」であって,「伝統(伝説)」「権威」「啓示(お告げ)」はむやみに信じてはいけないということが,とてもわかりやすく書かれている。
自分の肝にも銘じておこうと思う。