<b>進化しすぎた脳</b>

進化しすぎた脳  中高生と語る「大脳生理学」の最前線

進化しすぎた脳 中高生と語る「大脳生理学」の最前線


脳科学の研究者が小人数の中学生,高校生を相手に行った講義録。あとがきに「筆者の脳科学感の現時点での足跡である」とあるように,最新の研究成果がよくわかる。学生のレベルもかなり高いようで,密度の濃い講義になっていると思う。
脳を構成するシナプスの構造はとてもシンプルである。一方で,その数が膨大になったときに何が起こっているか現段階では解明されていない。部分と全体は互いに不可分で,相互に影響を及ぼしている。この問題を解くには「複雑系」が利用される。というくだりが私には特におもしろかった。
美しい,悲しい,おいしい,まずいというような生々しい感覚を,覚醒感覚,クオリアと呼ぶのだそうだ。意識の定義の1つに「表現を選択できる」というのがあるが,クオリアは表現を選択できないらしい。とりあえず,新しい言葉を1つ覚える。
池谷さんの本としては『海馬/脳は疲れない』isbn:4255001545 を読もうかどうか考えていたのだが,この本もとてもおもしろかった。
この本の付録に行列の掛け算が出てくるのだが,その方法をすっかり忘れている。復習しておかないと……。