<b>オッペンハイマー</b>

オッペンハイマー 上 「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇

 原子爆弾の父と呼ばれるロバート・オッペンハイマーの生涯。上下巻の分厚い本。一気に読了といかずかなり手こずった。
 時代の尋常ではない状況があったんだろうけれど,科学がこれほどまでに政治に翻弄されていたのかと再認識する。兵器の開発は最優先だけど,思想/信条に問題がある可能性が高いので盗聴器もしかける,なんてことが行われていたとは知らなかった。
 原子爆弾の投下の理由を改めて知るととても悲しくなるのだけど,ニールス・ボーアオッペンハイマーといった先進的な科学者たちが,研究成果を公表する(一国だけで独占しない)ことによって,地球上の生物を死滅させかねない力を抑止しようとしていたというのは数少ない救いの一つかも知れない。