技術史にも関心がある私、これは読まなきゃと入手して一気読みした。ENIACの写真は何度も見ているわけだけど、一緒に写っている女性が最初の職業プログラマーであるというのは知らなかった。しかも、配線図やブロック図などからプログラムを作り上げていた才能あふれる人たちだったとは。
ENIACについては、これまで関連する本も何冊か読んでいるとはいえ、漠然とした理解しかできていなかったことを再認識してみたり。初期ENIACは並列処理に対応していて、プログラマーの工夫で効率よく計算機を稼働させていたこと、稼働率よりも汎用性を高めるように改良されていたこと、ハードウェアの診断プログラムが実装されていたこと、ブレークポイントの起源は実際にケーブルを抜いていたことにあるなどなど、興味深い内容ばかりなのだった。プログラミングの鍵となっているのはENIACの時代から変わっていないのだなと再認識できた。
この本が出来上がる契機となったのが、素朴な疑問をもった著者とMITのワイゼンバウムとの出会いだった、というのがとても興味深い。また、技術史の研究者たちが女性を軽視してきたという何とも残念な事実も知ることになった(映画「ドリーム」の原作をまだ読んでいないことに気がついた。読まなきゃ)。
電子計算機、コンピュータの成立に関連する本で読んでいないものがまだまだたくさんある。と、もう少し数学の力をつける必要はあったりするが、のんびりじっくり追いかけていきたいテーマの1つだ。
原著のタイトルは、PROVING GROUND: The Untold Story of the Six Women Who Programmed the World's First Modern Computer。Longmanを参照すると、proving groundは「成果 [実力, 性能] を試す場」「性能試験場」となっている。日本語版のタイトルをつけるのに苦労したことだろう。