読書会の課題図書を読んだ。何度か提案があったものの、難しいのではないかと読書会主宰がとうとうゴーサインを出したカフカである。ずいぶん昔に『変身』くらいは読んでいるが、苦手意識が先行していて長編に取り組もうとは思っていなかった。あの頃に比べれば少しは読めるようになったのは、私の感覚が少しは変化しているということかもしれない。と言っても、カフカという人のお話は私にはやっぱりとても難しい。カフカをみんなで読んでみたいと提案している人の熱い語りが期待される。
最初に取り組んだのは光文社文庫の新訳『訴訟』のほうだった。ちょっと苦労したものの、一度訪れたことのあるプラハの街並みを思い浮かべながら読み進めた。風景とか空気感を知っているとなんとなく描かれている世界に入り込めるような。解説によると、カフカ作品の原典にはいくつかの版があることがわかる。と、先日読んだカフカの研究者による絵本『雑種』で解説されていたものだ。光文社版の底本は、「史料批判版」だそうだ。なるほど。
もう1回読んでみることにして、となると底本の異なる版がよいのではないかと入手したのが岩波文庫の『審判』である。こちらは「ブロート版」と呼ばれるもの。奥付を見ると1966年発行で、翻訳の日本語表現が少し古い。新訳(2009年発行)で通していたおかげでこちらもなんとか読了できた。底本の違いを味わうには、もっと読み込んでみる必要がある。
『審判』『訴訟』は未完の長編のため、作者がこの後どこまで書き込もうとしていたのか、かなり気になる。もう少し謎は明かされたいたのだろうか。
というわけで(でもないが)、短編を改めて読んでみた。作者が完成させた作品だけになんとなく安心感があったのだった。私には、短編のほうがその世界観に浸れる気がするのだった。
