『レオナルド・ダ・ヴィンチ』

ウォルター・アイザックソンダ・ヴィンチのことを書いているのか、と書店店頭でみつけて入手していた本。遺された自筆メモをもとにダ・ヴィンチの生涯が描かれる。スティーブ・ジョブズの評伝も面白かったけれど、この本もとても楽しく夢中になって読破した。鏡文字の評価など、そう考えるとしっくりくるというのがあちこちに見つかった。本人にはその気はなかったのだろうけれど、時代の先をいく好奇心と想像力、妄想力には憧れる。印刷物の普及という時代背景が大きな影響をもつというのがとても興味深かった。アリストテレスダ・ヴィンチのような人は現代には存在しうるのか、とか思ったのだけれど、インターネットのような装置はその原動力になるのかしらね。「レオナルドが天才となった理由、すばらしく優秀という人々との違いは、その創造力だ。」という一文があって、なるほどと思った。

ダ・ヴィンチの絵の実物の何点かを実際に見たことがあるのだけれど、改めてじっくり向き合ってみたいもの。

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『アリストテレス 生物学の創造』

どこかで紹介されていてちょっと気になったので入手してみた本。ギリシャの哲学者に関して教科書的な知識も怪しいので、少し本格的な本に挑戦してみようと思ってみた次第。筆者は進化発生生物学の教授だそうで、生物学者としての側面を中心にアリストテレスが見ていたものを紹介してくれている。顕微鏡も存在しない時代にここまで観察するのかという好奇心に感心するばかりだった。

プラトンはわれわれを抽象の世界に招き入れた。アリストテレスがわれわれを招いたのは、触知できる具体的な世界だ。」という一文があるのだけど、抽象的な思考を言葉にするのが苦手な私にぴったりな感じがした。好奇心はそれなりにもっているはずなので、もっと注意深く周りを観察すると、自分なりの理解を深められるかもしれない。

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『嘔吐』

こちらも課題図書の関連図書。私がサルトルの本を手に取ることになるとはまったく想定外の雰囲気。モノローグはいいのだけれど、話についていくのが精いっぱいでずいぶん時間をかけることになった。存在とは何か、と、ときどき自分の脳内に湧き出る疑問を見直すよいきっかけになったかも。「ことによるとあなたは人間嫌いなのでしょうか?」という一文があるだけど、たぶん根源的なところで私は人間が好きではないのかもしれない、と思ってみたりした。

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『子をつれて』『小僧の神様・城の崎にて』

読書会で課題となっている福田恆存をもう少し理解するために、とりあえず紹介されていた葛西善蔵志賀直哉を読んでみた。

葛西善蔵という人の本を読んだのは初めてなのだけれど、『子をつれて』の主人公はまぁあきれるほどにだめな人だった。ちょっと違うけれども私が知っていた世界一だめな知り合いを思い出していた。まぁ、彼は彼なりの生涯をまっとうしたのだろうから、だめはだめでいいのだろう。自分を振り返ってみると、お前はどうなのという自問自答を繰り返しているばかりだ。

志賀直哉の本は高校生のときに読んだことがあると思うが、たとえば『小僧の神様』はそういう結末だったっけというものだった。特に何かを議論しようというわけでもなく、友人は志賀直哉、私は夏目漱石を読んだ記憶があるのだけど、なぜそんなことをしようとしたのかまったく記憶がない。何がそうさせたのか、友人に聞くと覚えているのかもしれない。と、どうでもいいことを考えながら読み進められたのは、作者の産み出す自然な文体がそうさせるのかもしれない。

さて、福田恆存のいわんとしていることを私はキャッチできるだろうか。

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『創造する心』

マーヴィン・ミンスキーのエッセイ集でアラン・ケイの寄稿もあるというのでさっそく読んでみた。『心の社会』は数ページめくってみた程度なわけだけど、この本は最後まできちんと目を通すことができた。自分的に理解も納得もできていなかったことをいくつも見事に語ってくれている。たいへん勉強になった。

実際に触ったこともないのになぜかコンピュータ、というか情報系に興味をもち、高校進学もそっちの方向でどうだろうか、と担任でもないのに当時いろいろ話していた教師に相談したことがあったことを思い出した。あのときは、その問題は後回しにして普通科に行ってもう一度考えよと言われたような。技術者になれたわけではないが、現状を見直してみると、けっきょくそっち方面に自分のベクトルが向いていたことになりそうだ。あのときミンスキーのような先生に出会っていたら、私の人生は少しは変わっていたかもしれない。

おもしろい本でした。

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『金継ぎの家』『銀塩写真探偵』

あれこれちょっかいを出してなかなか読書が進まないので、買ったまま積んであるなかからこの2冊を読んでいた。相変わらず素敵な話を書く作家だ。

宝飾業を生業としていた家に生まれた私なのだけれど、子供のころから漆細工を取り上げた番組が大好きだった。私の身体に流れる職人の血がそうさせるのかもしれない。金継ぎについてはほとんど知識を持っていないのだけれど、そういうことをやっていたのか、と楽しく読んだ。私が家業を継ぐことはなかったわけだけど、父親ともう少し仕事について話をしておいてもよかったかも知れない。まぁ、お互い冷静に話せるようになるには、父親がもう少し長生きする必要があったろうけど。

もう1冊のテーマである写真については、物を観ることが苦手な私には今でも難しい課題だったりする。写真部の人たちの現像の雰囲気を垣間見たくらいで、これまで経験したこともない。少しは考えながら写真を撮ってみたい気もする。写真探偵のコンセプトは素敵かも。続きのお話も読んでみたいもの。

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『モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語』

J-Waveの番組で紹介されていて、ヘェ〜となったのでさっそく読んでみた。庶民が読める本が産まれた背景にイタリアの本の行商人が寄与していたのだそうで。私が知っているのはフィレンツェだけなのだけど、イタリアの底の深さがよくわかる素敵な本だった。

社会人になったとき、車に児童書の見本を満載して小中学校に本を売りに行くという経験をした。右も左もわからないくてあたふただったわけだが、見本を運んでくれた子供たちの素敵な笑顔は今でもよく覚えている。書店さんのセッティングのおかげで訪問販売をしたこともあった。いい思い出。初心忘れるべからず。

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