トーマス・マンの短編を読んだものの、どうも消化不良の感覚が抜けなくて、とりあえず未読本の山からポール・オースターを引っ張り出して読んでみた。
いつものようにうまく説明できないが、私はポール・オースターの作品が好きだったりする。作品の世界観に浸るのが嫌いじゃないというところだろうか。ストーリーの結末は想像の範囲に収まっていたけれども、柴田元幸さんの訳者あとがきにあるように、登場人物たちの不器用な生き様に共感できるところが、おそらく根源的には人間が苦手な私にはずいぶんあるような気がする。
この本で最も印象に残ったのが、タンジビリティ(tangibility:手で触れられること)という言葉だった。ただでさえ人とのコミュニケーションが得意でない私は、手で触れることのできないオンラインの付き合いはともかく苦手だったりする。覚えておきたい単語に出合った。