『猫を棄てる』

(たいへんありがたいけれどいまさらね、という感想をもちつつも)マスクといっしょに本日届いた本(写真に意味はない)。

見つかったときには手の施しようのない癌を患っていて、延命手術で医者の宣告よりは半年ほど長生きした自分の父親を思い出しながら読むことになった。ちょっと複雑な環境で育ったこともあり、私の父親の性格は昭和の頑固者に磨きをかけたような特徴をもつものだった。父親は、自分の父親(私の祖父)がどういう人だったのか、私にはけっきょく明かすことなく他界したので、実は私は自分のルーツを正確に理解していない。その割に長男である私はいわゆる本家筋から変な圧力を受けることが多く、父親はもとより親戚筋との関係をうまく築くことをとうとうできていない。外交やら政治やら医療やら、家柄が透けてくる人たちを目にすると強烈なコンプレックスを感じる根源的な理由の一つにはそういう背景があったりする。その契機になったのは、「自分の家の家系図を書け」という小学生時代の課題だった。そういえば。

「自分がルールブックだ」という絵に描いたような昭和生まれの職人だった父親の方から話しかけてきたことといえば、浮気による家庭崩壊危機と家業継承問題、それから妹の同棲問題くらいだったような気がする。けっきょく我が家は崩壊しなかったし、私は家業を継承しなかったし、妹は同棲を実現させた。父親には不満が残ったかも知れないが、それなりにところに落ち着いたのではないか。

とかなんとか、いろいろ自分の記憶を辿ってみるのはなかなか面白いな、ということを思った本だった。基本的に犬派の我が家だが、そういえば猫を飼っていたこともあったな、というのも思い出してみたりした。

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